
Celestial Blue
追跡
Mello, Matt V.S. Teru
『Nate(ネイト) River(リバー)…』
ニアの名前が、やっと…。これで神を安心させることができる。
魅上は歓喜の中にいた。
長かった、ここまで。神を脅かす、二つの存在、ニアとメロ。
おそらく、神が捜査本部の人間を殺せず、監視下に置かれる状況に甘んじているのも、
弥ミサなんて愚かな存在に振り回されているのも、
ひとえにこの二人を消す時期を見計らっている為だろう。
世界がキラの支配下に置かれた現在、他に神がためらう理由はない。
だから、金髪の顔に傷を負った少年をたまたま見つけた時には、
場所を忘れて狂喜してしまいそうだった。
少年の頭上には神から以前渡された似顔絵に付された、
「Mihael(ミハエル)=Keehl(ケール)」の文字が踊っていたからだ。
あの時、彼はこちらの狂喜に気付いただろうか。
少し不審そうな目をしていた。
「だから、これは外せないんだよ~」
二人の外国人らしき少年が巡回中の警官に捕まっていた。
情けない声をだした赤い髪の少年は奇妙なゴーグルをかけていて、
魅上にも名前は見えなかった。
もう一人はあきらめたようにうつむいて何やら菓子のようなものを囓っていた。
どうやら不審な者として職務質問を受けていたらしい。
二人とも異様に目立つ服装だ。これでは警官に疑われても仕方あるまい。
「俺、生まれつきの弱視なの。
外したらなんも見えないし、第一見た方だって気持ちわるいぜ。
あんた、目ん玉の赤い奴、みたことあんの?」
魅上は少し弱った顔をしている警官に急ぎ足で近寄った。
こういう者ですが、と言って名刺を渡すと、相手の顔が少しひき締まる。
司法と警察は必ずしも分離しているわけではない。
「お疲れ様です」
「そこの少年の言ってることは本当ですよ。USAで同じ物をみた事があります。
…失礼ですが、貴方はアルビノですね?」
「え、あ、そう…だけど」
少年は少し気まずそうにうつむいた。
魅上はうなずいた。
アルビノの人間が回りからどう見られながら生きてこなければならないか、よく知っていた。
「アルビノの方は、太陽光線に弱いのです。勘弁してあげてください」
「はぁ…すみません。しかし…」
職務熱心な彼は言って、ちらともう一人の金髪の少年の方を見やる。
「…なんだよ。俺の顔に何かついてるか」
そういった少年の顔を見た途端、息が詰りそうになった。
少年の顔は、何かついてるどころの騒ぎではなかった。
顔の半分を、火傷と見られるむごい痕が端正であっただろう容貌を破壊している。
しかし魅上が驚いたのは、その容貌よりも見事なブロンドにかぶった少年の名前だった。
息を飲んだ魅上を少年はふん、といった風に睨んだ。
あわてて息を整える。
「…傷があるからといって、人間性に傷があると決め付けるのは尚早です。
…放してやりなさい」
警官は少し逡巡したあと、少年たちを解放した。
「サンキュー、兄さん、かっこいいぜ!」
ゴーグルの少年が屈託のない笑顔を見せる。
そしてもう一人は手に持ったチョコをがりりと噛み、
魅上に何か問いたげな視線を寄越したあと、くるりと背を向けた。
胸元でその格好には不釣り合いなほど由緒正しそうなロザリオがゆれた。
なぜ神に追われていると知りながら、こんな目立つ風体をしているのか、理解に苦しんだ。
今まで捕まえられなかったのが不思議なくらいだ。
――ただの愚か者だろうか。
いや、これまで散々神を苦しめて来た相手。
決して侮ってはならない。
去って行こうとする警官をさりげなく片手で制止し、
こちらの声が聞こえなくなるくらい、十分二人が遠ざかったあと、
もう一つの名刺を渡して言った。
「あの二人を追跡しろ。
隠れ場所を発見したら、見張りをつけ、決して見失わないように。
潜伏場所が解った時点で連絡をくれ」
警官が慌てふためきながら去って行くのを眺めたあと、携帯を取り出した。
「…私だ。神にメロを発見したと伝えろ。指示を仰ぐ、とも」