"Open the lock, Kira"


「キラ。貴方には聞きたいことがたくさんある」

銀髪の少年はまだ幼さの残る頬に大人の表情を浮かべて、

目の前の大量殺人犯を見つめた。

キラと呼ばれた青年は、狂気の光を宿した瞳を少年に向けて不敵な笑みを浮かべて見せた。

整った顔立ちとがんじがらめの枷がミスマッチだ。

「まず、ノートをだして下さい。

キラはこの家で名前を書いているはず。書き込んでいる証拠もある」

「…へえ、どこに」

少年は無言で袖から小さなテープをとりだした。

「これに写っています。貴方がもう一人のキラと高田に指示をだしているところです。

ノートに名前を書き込んでいる所もありますよ。ここの机で」

言いながらぽんぽんと側のデスクを叩いてみせる。

「…そうか。監視カメラだな。いつの間に。見張りも役にたたないものだ」

青年は驚いた風でもなかった。

落ち着きすぎている。どうも気に入らない、と少年は思った。

「貴方がキラである証拠を掴みました。

貴方自身も拘束しました。

ゲームとしては、これで私たちの勝ちです…随分あっけないものですね。」

少年は何かつまらないといった風に唇をとがらせた。

「裁きの瞬間をカメラにとられるなんて、キラらしくない。

Lの監視をくぐり抜けたくせに。手を抜いてるんですか?

…何故Lが貴方に殺されたかわかりません。…何故貴方なんかに」

青年は少年のぼやきを無視してうつむいた。

心なしか微笑んでいるようにさえ見える。

「…ノートはどこですか」

「…それを手にいれてどうする。お前にはようのない物だ」

「貴方を死刑台に送るのにぜひ必要な物ですよ」

青年は乾いた笑い声を立てた。

「どの国の法律が法である神を死刑にできる?

…往生際が悪いな、ニア。正義はキラの側にある。

お前たちが今やっていることこそが、犯罪なんだ。

…そう、お前も、メロも、…Lも、犯罪者だ」

ニアと呼ばれた少年の目に暗い光がともった。

「黙れ、キラ。

よくもぬけぬけと…お前は神なんかじゃない。ただの狂った始末の悪い独裁者だ…!」

「ニア!」

奥の部屋から聞こえたメロの声が一瞬冷静さを失いかけたニアを平静に戻した。

「レスター、彼から銃口を離さないように。

…死なぬ程度にならいつでも撃って構いません」

メロは寝室のベッドのマットレスをわずかにずらして、

隙間に手を差し入れながらニアに手招きしてみせた。

「この壁に仕掛けがある。どうやら声紋照合で開く扉のようだ」

「開ける者の開けるという意思が明確にないと開かない扉…怪しいですね。

…奴に開けさせましょう」

「ノートは少なくとも2冊ある。日本捜査本部にキラが送った一冊。

そして、夜神…または高田の持つ一冊。それが此処か…」

「…あると思いますか」

「… … 」

「少し、あっけないと思いませんか」

「…キラが人を使ってだけでなく、自ら裁きをしているのは、意外だったな…」

メロもやはり、いぶかしんでいるようだった。

「けれど、この扉の中を確認してみればわかることだ」

「そうですね…」


――数時間前。

「…メロ。久しぶりですね。Lのいた捜査本部の建物にはもう行きましたか」

「ニア。今は観光話に花を咲かすつもりはない」

すでに日本にいることを前提条件として話し出すニアは相変わらずだ。

電話の向こうで相変わらずおもちゃでもいじっているのだろう。

かちゃかちゃという音が続いていた。

「…正直に言う。俺の友人がキラに捕まった。奴の要求はお前の顔見せだ。

…目を持つキラに殺させるつもりだ」

「…よくわからない要求ですね。

何故私がメロの友人のヘマのために死なないといけないんですか」

台詞はきついが声はまるで面白がっているようだ。

「俺だってそう思う。しかし詫びないといけないのはこの先だ。

友人はNHNの建物も監視していたんだ」

「…なるほど」

ニアの声はぐっと低くなる。手遊びの音が一瞬、止まった。

「…わかりました、要求を聞きましょう。

メロ、詳細を教えて下さい」

話を聞き終わるとニアは15分考える時間をくれと言った。

その間にある場所に向かってほしいとも。

電話はきっかり15分後にかかってきた。

「メロ、今向かっている場所から分かっているとは思いますが…

私は出て行きますが、要求どおりXキラの懐へではありません。

本物のキラを直撃します。

…奇襲です、メロ。協力してくれますか」

もとより、断るつもりはなかった。

「地下鉄の方には替え玉を行かせます。

どうせ4年前のスケッチしかないですし、

私であることが確実でないうちは殺されもしないでしょう」

『相沢や模木がカメラをみていたら偽者だとばれませんか…』

ニアの配下の者か、遠慮がちな声が電話越しにかすかに聞こえた。

『ジェバンニ、キラは我々を殺す気なんですよ?

なんだって捜査本部…

いえもう捜査本部という呼び名ではないかもしれませんが…の人間が関わって来るんです?

これはキラの作戦なんですよ…相沢や模木がでてくるわけがありません。

それどころか、私とメロが死んだら次は間違いなく彼らの番ですよ…

まぁ、実害がないと見なされて放置される可能性もあるにはありますが。

…もう少し頭を使って下さい』

『すみません、ニア…』

キラの言うとおりニアの部下の扱いはあまり良くなさそうだ。メロは苦笑した。

「あ、メロ、お待たせしてすみません」

「…いや」

「…今メロが向かっているのはキラ…夜神月が高田との密会に使っているマンションです。

二人が不在の時に監視カメラと盗聴器を仕掛けて置きました。

夜神がノートに書き込んでいる場面も写っています。

恐らく高田は利用されているだけでしょう…。

しかし、裁きは彼女もしています。

指示を出されていますから。

目を持つキラ…私はXキラと呼んでいますが…は高田を通して指示を与えられているようです」

「直接指示を出すほどには信用していないという事か…。

ノートに書き込む役は高田が引き受けてるのか」

「…おそらく。Xキラの正体は私も気になる所ですが、

残念ながら今の所まだ分かりません。

まぁ高田を捕まえれば分かることでしょうが…あのガードはキラ以上に堅い。

…もっと気に食わないのは、

何故今になってあの用心深いキラがぼろを出すようになったかということです…」

「…気味が悪いな」

「しかし、今迷ってる暇はありません。

キラが指定した時間までに…先に行動を起こしましょう」

「わかった。ところで…ニア。一つだけ聞きたいんだが」

「……なんですか」

「…どうやってあのキラのアジトを発見した?

俺たちがあそこを知ったのはほんの偶然なんだ。

…お前はどうやって知ったんだ?」

「…今は急ぎます、その話は後にしませんか…」

いくらでも嘘のつきようがあるだろうに、ニアにしては呆れる位の慌てぶりだ。

「ニア」

「…すみません。謝ります…でもまさか残しているとは」

「…やはり写真か。マイクロGPSを取り付けたな…」

「…メロ、例え身に着けてとはいえ、写真なんか持っていてはいけませんよ。

いくらLが撮った物だからといって…」

「余計なお世話だ!覚えてろよ、ニア」

我ながら子供っぽい台詞だと思いつつ、電話を切った。


「キラ、この扉を開けてください」

銃を突き付けられても美しい青年は動じなかった。

「…嫌だと言ったら?」

「拒否権があるとでも思うのか?俺はお前を殺したくてうずうずしてるんだぜ」

「…メロ」

ニアが眉をしかめた。

「早まらないでください。まだXキラの正体が分かっていません。」

「それがなんだって言うんだ。

ノートさえ消滅してしまえば目が有ったって意味はない。

黒幕はすべてこいつだ。夜神月だ。あとの雑魚なんかどうだっていい…」

「メロ、落ち着いてください…ノートが2冊とは限りません…

しかし、メロの言う事も一理あります。

…キラ、どうしますか?

貴方の言うとおり、キラを死刑台に送れる法律はもはやない…

ならばいっそのこと、ここで死んでもらって、

ノートは壁ごと焼却でも一向に構わない…どうせもう我々はアンダーグラウンドの組織です」

キラと呼ばれた青年はしばらく沈黙したあと、面倒臭げに顎をしゃくった。

「あそこにノートなんかない」

「ないかどうかは我々が決めます。

…まぁ貴方としてはどうせ殺されるなら何も言わないでおく方が得でしょう。

一つ、取引といきましょう。貴方にはまだ家族が残っていますね。母親と妹が。

あの扉を開けてくだされば、彼らが生涯、身体的にも精神的にも、

迫害されずに平穏に暮らせる環境と保障を約束します。

…どうですか」

青年は長いこと黙っていた。

それからポツリと言った。

「…もう一つだけ、条件がある」

「…図々しい犯人ですね。…なんですか」

「L…の事を教えて欲しい。先代の。扉を開けてからでも…構わない」

意外な要求に、その場にいたすべての者が目を見張った。

「…何故、今更Lについて知りたいんです」

「…ただの興味だ」

「ニア、こんな奴の言う事を聞くな…」

「…いいでしょう。けれど、Lはその立場上、全てが謎に包まれた人物だったんです。

私たちが知り得たことなんてほんのわずかなんですよ。

もちろん、本名だって知りません。

…貴方は知ってるんでしょうが」

「…ニア…」

「データはどうでもいい。

お前たちの目から見てどんな人物だったのか…それだけでいい」

「…メロ、この殺人鬼にも一片の心があるのかもしれませんよ。

…まぁ話はあれを開けたあとです…。

レスター、万が一の時の為、外のジェバンニとリドナーにいつでも入って来れるよう

近くで待機しておくように言って下さい。

怪しまれないようにと」

「わかった」

「…ではキラ、約束は守ります。開けて下さい」

青年は深呼吸をしてから、小さな機械に暗唱コードをはっきりと、

一文字一文字発音していった。


Thanks for coming.
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう